青い海と空のみちのく八戸から 波動はるかに 第1回「虹っ子」と蕗の薹
若い日に、英語やフランス語に憧れるも、その壁は堅く高く外国語コンプレックスの塊でなかなか話せなかった。東京では「ご出身は青森?」と言われると日本語で話すのも口が重くなった。帰省すると、地元のことばを話すのにどこか抵抗あり、またもや思うように話せない自分がいた。『ことばはどこから来るのだろう』と考える日々はずっと続いていた。
250もの民族や文化、言語の背景をもつカメルーンでは、向こう三軒両隣、生活も言語も異なる社会では、今日出会うひとが何族の何語を話す?という日常なのだ。多言語の活動に親しみながら日本各地や世界で多様な人々に出会い、多様な文化や言語に触れているうちに、その人と話したい、その人を知りたい、自分の心情や考えを伝えたい・・そこにことばが生まれる。外人いう人はいない!外国語は無い!と、どんな人とどんなことばででも話すのも楽になって、楽しくなってきた。
毎日の降雪に治史は「どこが熱海だ」と零しながらも、「せっかくの雪だから散歩する?」と私を誘ったり、私が忙殺されていると、一人で近場を巡り、古い神社を見つけては佇んでいると、中からご婦人が話しかけてくださって、「神社の縁起と御供物を戴いた~ことばは半分ぐらい解った」と笑顔で帰ってきたり。寒さと吹雪、久しく忘れかけていた過酷な自然に向かいながら、故郷のことばの音楽に揺れながら、新天地八戸での生活が始まった。2月豊作祈願の郷土芸能「えんぶり」、そして今日、雪解けとともに庭の蕗の薹が、春を運んできた。
かみとまい まさこ 榊原陽氏(多言語活動提唱者)の言語研究・実践団体に1973年より参加。1981年言語交流研究所設立時より国内・海外で多言語活動、青少年~多世代のホームステイ国際交流、高校生交換留学の派遣・受け入れを推進。一般財団法人言語交流研究所新プロジェクト部長。ヒッポファミリークラブ研究員・フェロウ。多言語活動・国際交流、「ハルくんの虹」をテーマにワークショップ・講演講師多数。著作者、水墨画家としても活動、著書に『多言語のある日々 波動はるかに』(遊行社刊)がある。2023 年 12月15日第52回「デーリー東北賞」受賞。
(モルゲンWEB2024)